ささきりか司法書士事務所

認知症の母が遺した公正証書遺言|相談内容(60代女性Hさん)

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認知症の母が遺した公正証書遺言|相談内容(60代女性Hさん)

認知症の母が遺した公正証書遺言|相談内容(60代女性Hさん)

2026/06/14

認知症の母が遺した公正証書遺言|相談内容(60代女性Hさん)

 

『認知症』の親が遺言を作成した場合、その遺言は有効なのでしょうか。

 

今回ご紹介するHさん(60代女性)は、お母様が遺した公正証書遺言の内容に疑問を感じ、当事務所を訪問されました。

 

本記事は二部構成です。

前編ではHさんのご相談内容をご紹介し、後編では遺言の有効性や遺言能力について法的な解説をします。

本日は、Hさんが当事務所にご相談に来られた経緯をご紹介します。

 

前編:相談内容

私には父と母、そして4歳年下の妹がおり、子供のころは4人で仲の良い家族でした。

 

父は10年ほど前に他界しました。

 

母と妹とは、長らく音信不通となっていましたが、1か月ほど前、妹から母が亡くなったとの連絡を受け、葬儀・告別式には参加しました。

その際、母が『公正証書遺言』を作成していたことがわかりました。

遺産である預貯金2,000万円のうち4分の3の1,500万円を妹に、残り4分の1の500万円を私に相続させるという内容でした。

遺留分は侵害されていませんが、法定相続分を大きく下回る内容に、私は大きなショックを受けました。

同時に、「この遺言は母の真意にもとづくものなのか」という疑念も感じました。

 

母は、父が亡くなった10年ほど前から『ものとられ妄想』の症状が出始め、だんだんひどくなり、私やヘルパーのAさんなど、身近な一部の者が母の財産である宝石や時計、衣類などを『盗んだ』といい張るようになりました。

母の中で『盗る』人はいつも決まっていて、私もその一人でした。

 

『もの盗られ妄想』以外、認知機能の衰えが感じられることはほとんどありませんでした。日常生活は普通に送っており、会話に不自然さが目立つこともなく、一見すると認知症には思えませんでした。

 

私は、母を促して医師の診断を受けさせたことがあります。

その際、『認知症』と診断され、医師から『進行を遅らせるための薬物治療』を勧められました。

ところが、母は自分が『認知症』であることを認めようとしません。『薬による治療』も頑なに拒絶し、この日を限りに、病院への通院は一切しなくなしました。

それどころか、「お前は私を病気にしようとしている。」などと激しく怒り、

私は、実家へ帰ることも、母と連絡を取ることも、許されなくなりました。

妹も、すっかり母に同調し、私と母との接触を阻むようになりました。また、医療も受けさせないようにもしていたようです。

妹は『ものとられ妄想』のターゲットにされることもなく、母の信頼を得ていたようです。

 

その後まもなくして、母が老人施設に入所したことを、妹から聞きました。

しかし、妹は、母がどの施設に入所しているのか、どのような生活を送っているのか、一切教えてくれず、母と会えない日々が続きました。

 

母が施設に入所した当時、年に1~2回、妹と電話で連絡を取るようにはしていましたが、直接会うことはありませんでした。母の居場所を教えてもらうこともありませんでした。

最近、5年間くらいは全く連絡を取っていませんでした。

 

会えない日々を10年近く過ごし、突然の母の死を知らされ、さらに母が遺言を遺していたことも知りました。

母が遺言を作成したのは、認知症の診断を受けた約5年後、今から5年ほど前のことです。

 

一般的に、専門的な医療を受けずに認知症の症状を放置した場合、『ものとられ妄想』などの症状が進行することはあっても、自然に回復することはほとんどないと言われています。

診断から5年が経過していることを考えると、当時の母には認知機能の低下があった可能性は否定できません。

遺言作成当時、母に十分な遺言能力があったのか、私は疑問を感じます。

 

また、『遺言執行者』が妹が指定されていることから、妹が遺言の作成に関与した可能性も考えられます。

 

さらに、妹は、私と母が音信不通となったころから、高級車を購入したり、以前よりも華美な服装をするようになったり、海外旅行をしたり、子供たちがそろって私立大学に進学をしたり、当時の妹夫婦の収入状況からすると不自然に感じられる生活ぶりでした。

 

私は、遺言は妹が主導して作った可能性があるのではないかと感じています。

また、妹は、母の財産を生前、勝手に使っていたのではないでしょうか。

 

 

次回は、Hさんのご相談に対して、遺言能力と遺言の有効性について、法的な解説をお伝えします。

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